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自然史教育展開プログラム 趣意

自然史教育展開プログラム(仮称)趣意
 近年指摘されている日本の教育上の問題点のひとつに、「理科離れ」現象があります。 しかし、この現象は単に理科だけの問題ではなく、学生や生徒の本質的な学習意欲の低下に根ざす、 より深い問題であると考えられます。ここでいう本質的な学習とは、 大学や企業に進むための勉強というような即物的なものではありません。 また、学校や塾、家庭で費やす、いわゆる勉強でもありません。 ある一人の人間が、特定の現象や事柄に興味を持ち、そのことについて考えたり、 積極的に取り組もうとするような、知識欲に根ざした学習過程だといえます。 現在、大学では学生の総合的知識不足と学習能力や意欲の低下が指摘され、 小中高でも同様の問題がみられるようです。このような現象は、 将来日本の科学技術力や教育力の低下をまねくだけでなく、社会全体の活力と国際競争力を 失わせることになるでしょう。

 このような問題点を解決するために、義務教育段階での自然史教育を活用することがしばしば 提示されています。知識欲への簡便な入り口として、五感に強く訴えることのできる自然史分野の 現象や事実は非常に有効です。一方で、カリキュラムの側から上記のような問題点を改善するべく 総合学習が導入されました。様々な事象が複合している自然史分野の題材は、総合学習の時間で行う 内容としても取り組みやすいものといえます。しかしながら、たとえば自然史分野の題材を教育現場で 扱おうとするときに、何をどのようにすればよいかとまどう先生方も多いといわれています。

 自然史学会連合は、参加学協会の連携をはかりながら、自然史科学の発展と研究成果の 社会還元に寄与することを目的に設立されました。当然のことながらその活動目標の中に 自然史教育の発展が含まれていますが、先述したようにそのような教育に最も効果が期待される 義務教育段階で働く専門家は学協会内には多くありません。実際の教育効果は、現場の専門家である 先生方の手ではじめて現れます。そこで、連合では現場の先生方のご要望に応じて自然史教育の 題材や手法について専門の研究者の立場からお手伝いできるような道を捜すことといたしました。 それが、今回のプログラムです。

 連合には34学協会にわたる広範な分野の専門家がおります。また、研究者の所属する大学、 研究所、博物館などは全国にあります。そのような施設とも連携し、連合が研究者をご希望に応じて 推薦し、それぞれの地域の先生方に協力できるような体制を作りたいと考えています。 派遣費用は連合が負担いたします。

 このプログラムの重要な点は、現場の先生方のご希望が無ければ成立しないという ことです。 できれば、理科教育部会などを通じて依頼をいただき、実現の可能性や方向性を探りながら、 自然史を通した教育を展開するべく努力したいというのが現在の目標です。このような試行錯誤を 繰り返しながら、一定の規格と方向性をもった活動が連合として継続できるようになれば理想的です。