地域博物館の研究環境に関するアンケート
科研費申請資格を中心にした、地域博物館の研究環境に関するアンケート |
自然史学会連合では、科学研究費の申請資格を、機関単位ではなく、 個人単位に与えるよう
変更すべきである、という議論をしております。最終的には、各界への提言としてまとめたい
と考えておりますが、まず、この問題にもっとも深く関係されるであろうと予想される地域博物館の
研究者の方々のご意見をお聞きし、議論をより実質的なものにしたいと考えております。
趣旨をご理解いただき、以下のアンケートへのご回答をお願いいたします。 質問1: 「博物館において研究活動を行う上で、障害となっている主な原因は何であるとお考えでしょうか。」 (ご自由にお書きください)。 質問2: 「科研費の申請資格が個人単位に与えられることは、地域博物館の研究活動を活性化させることに、 向かわせると考えますか?」 質問3: 科研費申請は、多くの場合、館外の研究者との共同研究の道が開かれていることが前提となりますが、 現在、館外の研究者と共同して研究活動を行うことに対して,館としてどのような規定や制度(あるいは制限) を有していますか? |
なお、本アンケートの結果を報告書として印刷しました。ご希望の方には別刷りを お送りしますので、
下記までご連絡ください。 連絡先: 森田利仁 |
アンケートに対する回答全文 |
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アンケートの回答は、その所在地をほぼ北から南へ配列し、以下のような順になっている。 ここで小 文字a,b,…は、同一館からの複数回答を区別するために記してある。またここには、 民俗系博物館 (県立F館)と動物園(市立F館)が一館づつ含まれている。他はすべて自然史を 含む博物館であ る。 1.町立A館 2.市立A館 3.町立B館 4.市立B館 5.町立C館 6.県立A館a 7.県立A館b 8.町立D館a 9.町立D館b 10.県立B館 11.県立C館a 12.県立C館b 13.県立D館 14.県立E館a 15.県立E館b 16.県立F館 17.財団A館 18.県立G館a 19.県立G館b 20.県立G館c 21.市立C館 22.私立A館 23.市立D館 24.市立E館 25.市立F館 26.県立H館 27.市立G館 28.県立I 館 |
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町立B館から 自然史科学における地域博物館の役割が大きくなっている,というご指摘に同感です. 私自身は「僻 地」の小博物館にいて,全体の問題解決に貢献できる意見も持ち合わせませんが, 狭い経験を若干述 べさせていただき,アンケートに回答したいと思います。 <我々の,自身の,依って立つ根拠を考えよう> 県レベルと市町村レベルでは同じ自然史(系)博物館といっても,その由来や運営の考え方がちがう のでしょうが,人口規模の小さい町村立の自然史博物館があるとすれば,それは特定の課題・テーマ を もって(少なくとも意識して)できあがっている,と思います。そこには,一般職員では太刀打ちできない 仕事があって,専門家がいます。職名は学芸員でも研究員でもよい.彼は専門家としてその自治体=住民 に雇われているわけです.彼は,まず動物学者や古生物学者・・・であって,テンポラリーな職業として 学芸員なのです.この点を忘れては,話はすすまない.つまり私のスタンスは, 1.自身は「お雇い外国人」=町が自前(の職員)でやれないからエキスパートとして雇われた. 2.町はパトロン=古生物学者として町に研究費を頼り,活動する.の2点. 小自治体の自然史博物館では,所属する専門家に期待されるのは館のテーマに関する研究とそれをベース にした宣伝です.研究は,館のかかげるテーマが主体になります.これが十分でなければ,専門家を置く意味はない. 宣伝の内容は,まず,テーマの研究成果が,~博物館発・~町発として,独自の出版物・学会誌やマスコミを 通して発せられます.これをベースとして,博物館の存在・設立主体の自治体(まちおこし)など関係するもの すべてにかかわります.宣伝を「教育」と置き換えてもよい.教育には2側面があり,一つは自然史の普遍的な 教育であり,これは宣伝そのものです.もう一つは,社会教育機関としての博物館にもとめられるもので, 住民に雇われている以上,彼らへのサービスとしての教育・普及活動を忘れてはなりません.住民サービスとしては, 専門以外の内容も取り組まざるを得ない. この宣伝がうまくいくと,そのフィードバックとして「研究をもっと」という要請・要求が双方から高まり, 研究費(として利用できる予算)が増える可能性があります. <我々の生活を考えよう=「基本給」で生活は十分できる・「時間外勤務」を適当にやろう>これも, 県レベルと市町村レベルではちがうけれど,また自治体ごとに実状は様々でしょうが,「時間外勤務手当」が結構出る. うまくすれば,年間数十万円の上の方は獲得できます.これは研究費です.決済はいらない.額は多くなくても, とりあえず自由に使える研究費と位置づけられます.普及活動は土曜・日曜日に多く,「休日出勤」は結構多い. その結果,私の場合は,奨励研究Bの2倍以上の「研究費」を得られることになります.(当然ですが,研究活動での 時間外手当の請求はしません.)この「研究費」は,おもに学会費・雑誌の購読・書籍代などの情報収集費と旅費に 使っています. 質問1への回答: @情報不足・・・文献=雑誌を必要なだけ揃えるのは困難.面会しての情報伝達が極端にすくない. @研究費が不自由であること=消耗品は適当に買えますが,備品(足寄町では2万円をこえるもの)は, 当初予算にあげねばならず,かつ,現状の財政状態からはほとんど認められない. @「住民サービス」に時間をとられる・・・時間配分がうまくいかない. @近くに議論できる相手が少ない=日常の会話の中で,学問・科学・自然史・世界にかかわる内容は, 大学にいたときよりも遙かに少ない. 以上のような状況の中で,自らの研究意欲を高いレベルに維持するのが難しいことが主な障害です. 質問2への回答: 活性化の一要因にはなるとおもいます.実際には,申請者の業績や成果の評価は容易ではないでしょうが. (評価しにくい,重要な研究があり得る,という意味です.しかし,ここにこそ,地域博物館の存立意義が あるのですが.) 質問3への回答: 具体的に規定・制度を設けてはいません.また,特別の制限はありません.実際に,館外の研究者 (海外をふくめて)との共同をすすめていますし,私が採用される前からある,大学などの研究者への 「謝礼」は,減額しつつも既得権的に継続しています.(研究費を得るための共同研究ではなく, 研究費支出の共同研究になっています.) |
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市立B館から 文部省の動きの中で(自治体が自主的に採用したのではなく),博物館には学芸員を置くことと言われて 採用したものの,最近になって『置いたほうがよい』という曖昧な表現に変わり,自治体の管理職は 『=置かなくてもよい』と捉えています.そのために採用はしてみたものの学芸員という立場では維持できない のが現状です.まるで,自転車も買えない貧乏人がいきなり高級外車をもらってガソリン代はおろか, その維持にも困っているような状況です.博物館の学芸員が博物館以外の施設の管理に回される,そんなことが 起こり始めています. 質問1への回答:学芸員論はさまざまな形での学芸員の集まりの中で議論され尽くしたと思いますが, このような議論は学芸員相当の職員の間での議論に過ぎず,学芸員を採用している教育委員会あるいは それ以上の組織の管理職を含めた議論はされていない.そればかりか,このような議論に対し一緒になって 現状を考えようとする管理職はいない.すなわち,管理する側にとって学芸員あるいは研究員は専門職員ではなく, 自治体の便利な一般職員にすぎない. 質問2への回答:思いません.なぜならば,地域の小規模博物館(たとえば,学芸員1人と館長のみという 規模の博物館)ではたとえ科研費などの補助金を貰ったとしても,それを使うための研究に要する時間は まったくとれない(とらせる気が無い)のが現状であり,プライベートな時間を費やして研究をおこなったとしても, 年度末(期限末)の報告書を書くための余裕はまったくとれないからである. 質問3への回答:まったくなし.現状では研究員は専門研究のために採用しているのではなく,専門的な研究や 地域研究だけでなく,大学における普及活動(非常勤講師など)や共同研究までもが否定されている. 大学のたった4日間の集中講義の非常勤講師についても営利企業従事であるとか,博物館業務に支障があるとか という判断がされています. その他:科研費が配分されることは非常によいことだと思います.ただ,地域の小規模博物館においては研究に 費やす時間はまったくとれないのが現状で,研究者とともに野外調査に出かけたり,自分のテーマで調査に出かける ときには,休暇をとって自費で行っているのがほとんどのケースではないでしょうか.このような状況の中で共同研究 として科研費をいただいても,ノルマが増えるだけでまったく時間はとれないことに変わりはありません.管理職は 「国から補助を貰った」ということだけを宣伝に利用し,それによって生じる研究負担はまったくの個人の責任として 面倒を見るつもりはありません.個人と市の区別がつけられない当市では最悪の場合,個人でもらった研究費までも 市の財政に入れろといいかねません. 先にも書きましたが,学芸員論はほぼ議論され尽くされたと言ってもよいと思います.しかし,学芸員を管理する 上部組織はまったく議論に応じる気もありません.当市がよい例(悪い例?)で,研究のために採用したのではなく, 市民のために教科書や図鑑に書かれていることをわかりやすく展示して教えていればよいという姿勢をとっており, そのための基礎研究は個人の業績であり,市では面倒は見ないという方針です.このような状況で,市民の教育に 必要な参考文献や基礎標本の予算要求には応じる気配もありません.それでは専門研究職員は必要無いかといえば, 対外的に「・・・の町」を売り物にしており,「大学で研究した主任研究員という名称の職員が2名いること」が 重要なのだといいます.「・・・の研究は大学で十分にしたからもう必要無い」というのがすべてを語っているように 思います. 学芸員は社会教育主事相当の職員で彼等の会議にも時々参加しています.そこでは,すべての自治体で専門職員を 置くことはできないので,各施設が専門性を持った職員を配置し,必要なときに協力しあうという方針を出しているが, これは社会教育主事という専門職員の議論であって,管理職段階では他の市町村の自治体や市民に対してサービスを する必要はないという考えを持っています. |
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町立C館から 質問1および2への回答:結論から申しますと,科研費の申請が機関ではなく個人になることで, 日本国内でもユニークな研究が博物館において進行すると思います.大学院重点化でオーバードクターが 溢れている現在,もはや大学その他の研究機関に受け入れはなく,地方の博物館に就職するケースが多くなっている ことと思います.大学ではある特定の分野についてのスタッフの充実は図っているようですが(たとえばOD21に 向けた古海洋学関係スタッフの充実),多岐にわたる専門のユニークな研究をやっている人の受け皿はありません. その受け皿になっているのが,博物館だと思います.しかしながら博物館に就職しても,自分の研究テーマをやれる 人は数少なく,雑用と普及事業にあけくれる間に年をとっていっているような気がします. この部分で学芸員の待遇改善や仕事の理解が行政側に必要です.一方科研費を申請できる博物館はほんの一握りで, 北海道の自然史系では1機関だけだったような気がします.しかし,そこで最先端のユニークな研究がなされているか というとそうでもない気がしてなりません.それで年間1000万円以上の科研費がついている話をきくと, 設備もなくまた文献のコピーや分析にいくのに自費を使っていっているのがやるせなくなります.民間の研究助成金は 消耗品や旅費にしか使えないものが多く備品も買え科研費は非常に多くのメリットがあります. 自然史関係の専門分野が細分化した今,それぞれの最先端の研究は多くの博物館学芸員の手で行われていると思います. それらの分野が淘汰されることなく,発展していくために是非科研費の申請が地方の博物館でも行えるようになるように 期待しております. 質問3への回答:私どもの館ではなにも問題がないと思います.あえていえば,他大学や研究機関と共同研究をやること が業務としてみなされるかどうかだと思います.また,研究が個人の研究なのか町のための研究なのかということも 問題になっていると思います. |
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県立A館aから 質問1への回答:第1に、よくいわれることですが、業務分担が出来ておらず、学術学芸員としての仕事、 教育学芸員としての仕事、そして各種の技官的仕事、さらにはこれらの仕事を支える予算や手続きなどの事務を ひとりでこなさなければならない点があげられます。学術学芸員としての仕事をそれ以外の仕事が圧迫するわけですが、 逆に全国的に通用する成果を出すためには学術学芸員としての仕事に大きなエネルギーを注ぎ込む必要があります。 しかし、そうするとその他の仕事を圧迫し、それを取り戻そうとすると学術学芸員の仕事が圧迫されるという 悪循環となっています。 第2に教育学芸員としての専門領域が広すぎることがあげられます。大学教官なら自分の専門ではないから、 といえますが、一般人に対応しなければならない学芸員はその県(地域)の地質について何でも対応しなければなりません。 展示や普及事業だけでなく地質に関するあらゆる問い合わせに対応することになります。 第3に手続きが多すぎるということです。これは最初に少しあげたことでもありますが、事務手続きが煩雑です。 展示等の事業を維持するためには、委託や購入などの事務仕事をするわけですが、事業1本につき、たとえば前年度の 予算要求から当該年度の完成検査までトータルで半月は必要だとして、これを6本やるとなると3か月は完全に潰れます。 話をしやすい事務屋さんであっても、「税金で動いているのだからそれはしかたがない」といいますが、 それにしてもどうにかならないのかと思います。予算にないあらゆる外部対応にも煩雑な手続きが待っています。 第4に、研究活動の位置付けがあいまいになっている点も大きいと思います。展示や普及事業、それにその方法論、 つまりアウトプットについては話題にしたがる人は多いのですが、これらの人たちはインプットにまで想像が及びません。 餌を食わせなくても働けると思っているわけです。このような雰囲気が支配的である点が研究をやりにくくしています。 質問2への回答:基本的にはイエスだと思いますが、カネがあってもヒトとヒマがないと充分な成果があげられないかも しれません。科研費のことはよくわかりませんが、申請した研究テーマにかかわるアルバイト的なヒトは確保できても、 博物館の通常業務を肩代わりしてくれるヒトはいないし、ヒマも確保しがたいという現状は引き摺ります。 投資する方も成果が上がらないような環境にいる研究者には投資したがらないかもしれません。従来、指定研究機関の 研究者に配分し、それ以外に配分してこなかった理由も検討する必要があると思われます。 質問3への回答:ありません。これまでに自然発生的に地元の大学の研究者と共同研究をしたことはあります。 この場合、当方で通常使える旅費などの範囲で行いました。しかし、雑務に追われる学芸員は大学の研究者のペースには なかなかついていけませんでした。 質問番外:アクションプランの長期的戦略科研費に関する文部省への働きかけは非常にいいことだと思います。 そしてさらに、地域博物館をかかえる各自治体へ自然史学会連合から博物館のありかたについて「ガイドラインを示す」 などということも必要です。館内や自治体に対して、下から意見をあげるのがなかなか難しいので、全国的なレベルからの 提言が上から示されると各学芸員は動きやすくなると思います。 自然史学会連合のアクションプランと各学芸員による館内での努力に加えて大事なのが、地域との連携だと思います。 といっても、わけのわからない人との連携ではなく、地域の大学や研究機関の自然史研究者との連携です。 自然史学会連合の守備範囲を越える部分もあるかもしれませんが、「自然史博物館」では悩まないで済む「総合博物館」 における「総合」について、どこかで議論してほしいと思います。近頃できつつある大学の総合博物館でも この点はあまり議論されていないように思われます。自然史と文化史との折り合いの悪さは いったいどうすればよいのでしょう。両者の境界領域である「天然記念物」は議論の空白地帯となっていると思います。 自然史領域からは、たとえばタイプ標本などがこういった問題にかかわってきます。 |
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県立A館b 質問1への回答:教育現場20年を経てやっと博物館に入れました。教育現場を抱えての研究活動は 並ではありませんでした。 おまけに教育普及担当ゆえの雑用が多く更には起案事項が多すぎます。(これがもっとも苦手)。 管理の方からのしめつけもあり、研究のまず手続き事務をという書類ありきが優先しておりこれが 最も研究活動を阻害している要因と思います。もっと自由に楽にフィールドに出て、とっさな出来事にも対応したい。 私の研究対象は本州産・・・個体群の生息生態に関する調査なのでいつどこに出現するのか?わからないのです。 それを書類を書いてからとかハンコをもらってからでは間に合わないのです。まるで主任専門学芸事務職員 といった感じです。 質問2への回答:まず申請のたびに課長に提出し研究テーマと合致するか否か?の点検をうけ提出するのが とても疲れる。団体に与えられるだけの額でもない(B)申請では、個人単位で構わないし、それがひいいては 年間たった5万円しかつかない博物館研究費のためにもなる。・・・中略・・・会員(調査員)が精力的に動くので、 私はその年その年の助成金捻出でこれも一大仕事になってしまいます。いちいち干渉されてはたまらない。 質問3への回答:規定や制度があるのはよくわからないが、館外研究者と共同研究して始めていいのものなると思うが、 結構、課長がうるさく管理もうるさい。次長が変わったせいもあるが。。。。 |
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町立D館aから 質問1への回答: 1)職員体制の不備 当館は、地方の町立博物館であり、学芸員は2名正規職員として採用されています。しかし、事務職の正職員は 館長補佐1名のみであり、この他は非常勤館長と窓口の臨時職員3名がすべての職員です。このような職員体制では、 学芸員は開館スタッフとして組み込まれており、調査研究のため館をあけることもままならない状態です。 また、様々な事業を行うに際して、そのほとんどすべてに関わらなければならないため、実際に調査研究に割ける 時間はほとんどないのが現状です。 2)学芸員にたいする町当局の認識不足 博物館の開館にあたり、学芸員を採用してみたものの、町当局は、学芸員が研究職であるといった認識は 全くないと思えます。逆に、研究し、発表することは個人の知識を得るためだけのもので、職務中に行う物ではない とする考えがあるようです。町当局は、博物館の建物を造り、開館(常設展示の公開)をしてしまえばあとは受付だけが いればよいとするスタンスであり、実際、我々学芸員の給料表は一般事務職のものが適用されています。 博物館は研究機関であり、研究成果は、論文などを通して公にされ、公共の役に立つといった考えを理解させなければ いけないと常日頃から考えています。 3)予算の不足 上(2)で述べたような状況なので、調査のための旅費などはほとんどついていません。 質問2への回答: 予算があれば、対役場との交渉が有利に運べるので、研究活動を活発に行うことが可能になると思います。 問題は、科研費は個人単位で与えられるものなので、科研費で行う研究が博物館(公)の業務ではないと判断される 場合もありうるといった点でしょうか。 質問3への回答: 館としては、規定や制度はありません。しかし、もう一人の学芸員が非常勤職員だった時から、 館外の研究者との共同研究はごく当然のように行ってきましたし、予算が他から出るのであれば海外の学術調査などで 職専免が認められるといった前例があります。ただ、職務専免義務免除であるということは、当館の職務としては 認められていないということなので、科研費から費用は出るが公務出張といった扱いにできるよう、制度を改革して いかなければならないと考えています。 長々と書いてしまいましたが、科研費申請の道が開かれることを切に願っています。 職場内での不和といった点は心配しておりませんが、それを執行するための環境については、町当局を納得させる 必要があるかもしれません。 |
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県立B館から 質問1への回答: ・地方自治体の行政が今だに博物館を研究機関として認識していないこと。 ・業務内容の分業、専門別制度についても認識がなく、行政も含めて社会全体が博物館の仕事イコールすべて 学芸員の仕事と考えていること。 ・博物館が行う仕事の内容自体、ほとんど社会に知られていないこと。即ち、今だに博物館イコール展示施設 という認識にとどまっている。 質問2への回答: ・科研費を申請できても、十分な研究時間を与えられないのだから、研究活動の活性化につながるとは思えない。 質問3への回答: ・明文化された規定や制度はないが、博物館として予算を組んで行う研究活動においては、館外の研究者を 招致して指導を得たり、協同で研究することは、比較的自由かる十分に行うことが可能である。 |
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市立C館から 学芸課の何人かの意見を取りまとめたものです。 質問1への回答: ・財政難から来る研究予算の削減 ・ 博物館の人員がすくないため、多種多様な業務を行う必要からの時間不足 ・ 大学や一部の博物館を除き、科研費申請権のないところが多い。 ・ 博物館側のアピール不足 ・ 館側にもなぜ研究が必要なのか分かってもらう努力が不足している 質問2への回答:(相反する回答になっていますが・・・) ・ 1個人では活性化に向かわないと思うが、数人か研究チームであれば、効果がでると思われます。 ・ 学問、研究は基本的に一人の発想からでるもので、まずは1個人に与えられるものである。 ・ グループにしか与えないということになると、研究が限られたものになる恐れがある。 ・ 個人でもグループでも活性化すると思われる ・ 個人の研究か、館全体の研究は研究テーマによる。 ・小さな博物館にも申請権を拡大してもらいたい。 |
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私立A館から 質問1への回答:博物館は展示施設という一般の理解が定着して、組織上も研究機関とも教育機関ともつかない 立場にある場合が多いと思います。県や市などの教育委員会に所属していたとしても、教育施設と理解される 場合が多く、そこに働く職員(特に事務職員)の多くでさえ博物館が研究教育機関という認識をもっていない場合が あります。すなわち、博物館において研究活動を行う上で障害となっている主な原因は、博物館が研究機関である ということが認められていないことにあると思われます。 博物館が研究教育機関であるということを認識してもらうためには、研究成果が博物館の展示や教育活動に反映させる ことからはじまると思いますが、そのような地道な活動を行っていくためには組織としてまたは博物館のメンバーの 理解が必要です。 博物館で「研究、研究」と言うと、「博物館の仕事をなまけて研究ばかりして」と言われることがあります。 「研究も仕事である」という理解がないこともありますが、博物館の仕事が多岐にわたり、多忙であるために 「研究」に逃避しているように思われるのだろうとも思います。博物館の中で、他の仕事と同様に「研究」も 仕事の一部としてはっきりと規定し、仕事配分やリサーチャーやエデュケーターなどのような分業などもおこなう 必要があると思います。 博物館は何を行うところかということをもっとはっきりと博物館自身でアピールするべきであり、その目的にしたがって、 博物館の研究計画や教育計画を遂行すべきであると考えます。 質問2への回答:科研費の申請資格が個人単位に与えられることは、地域博物館の研究活動を活性化させることに、 向わせると考えます。科研費を申請できるということは、研究活動ができるということであり、研究者という自覚と 博物館にとっても研究機関であるという認識ができます。また、研究活動は研究者個人の視野を広げるとともに、 博物館活動に対しても多くの貢献ができると考えられます。質問3との係わりもありますが、 館外の研究者との共同研究ともなれば、なおさらで、他の研究機関との交流なども盛んになり、博物館としても 研究実績が蓄積されます。 質問3への回答:当館の場合、併設されている大学の教授や講師が学芸部長などを兼任していたので、研究活動には ある程度寛大でしたし、奨励もしてくれました。しかし、博物館での仕事についてはまったく別で、「博物館の仕事 (展示とメンテランス)はさぼって研究ばかりして」といった調子です。 また、これまで博物館として、兼任の大学教員は別で、学芸員が科研費など研究費をとって研究をしたことがなく、 研究費に関する規定などはどうもなさそうです。以前に私が笹川財団の科学研究費をとったときも、館長や部長の承認を うければよかっただけでした。しかし、この承認も館長や部長の意向ひとつで決まる状況で、館長や部長の気分次第 という現状もあります。 実際には、認められた研究費に関する研究を職場でしていたら、勤務時間にその研究をするなと言われたこともあります。 このような話は他の博物館でも聞いたこともあります。 今年度はじめに、文部省の教材教育の委託研究を私は個人で申請しましたが、このときは「博物館の仕事が忙しいので 認められない。」というようなことを言われました。いつも事前に承認を求めるようにと言われますが、 たしかにそうなのでしょうが、現状では「この忙しい時に、研究をしようなどとは・・」と言った雰囲気があります。 またどのような研究活動を博物館で展開していこうかというビジョンが示されていないため、どのような研究を 博物館でしていけばよいのか、しない方がよいのかさえわかりません。どちらにしても、博物館としての科研費をめぐる 体制だけでなく、研究体制全体がきちんと整っているところは少ないと思われます。 大学の先生から、科研費申請に共同研究者として何度か誘われたことがありましたが、科研費申請資格がないので いつもお断りしています。科研費申請資格がなくても、共同研究者となれれば、それが実績となり、科研費申請資格が 受けられるようになればとも思います。そうなれば、個人としても博物館としてもメリットは多きいと思います。 私は、・・・前に学位(博士)をとりましたが、名刺のタイトルに「理学博士」と記入した以外に学位をとって かわったことは何もありませんでした。少なくとも学位をもつ人には、科研費申請資格くらいは与えられてもよいように 思います。 就職した場所で差別されているのがこの国の現状ですが。 |
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市立D博から 質問1への回答: ・学芸員の定義-博物館法等で定義されているが具体的でない。 ・学芸員の仕事分担(教育普及,研究など)の提案をされているが、分担は進んでいない。 ・博物館法の改正。 ・学芸員の職種-行政職、研究職、技術職、教育職等である。一定していない。さらに、階層についても使用が一定でない。 学芸員、主任学芸員、・・・・・等(行政職の副職名の整備を行っている) ・学芸員の仕事の評価が確立されていない。特に研究に関しては(年間目標設定、達成度などを年度単位で提出する。 研究報告の執筆義務化。年末研究発表会) ・学芸員の評価など学会としての支援がない?(大学の研究者と博物館研究者の評価の基準策定?考えてみては) ・博物館の使命(標本保管の重要性のアピールを積極的にする) 質問2への回答:これだけでは、考えません。現状では科研費の位置づけがされておらず、条件整備が第一段階である。 研究職でない博物館職員も研究しているが、科学研究費の利用の道が申請以前の段階で閉ざされている。また、 地方公務員法に触れない方法は? 個人単位、それぞれが道を開いていく必要はあると考えている。 質問3への回答:なし(科研費には承諾書が必要です。教育委員会としては、出せない状況です。行政職のため) |
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市立F館から 質問1への回答:組織体制です。行政組織の一部である動物園では、一般行政組織と同様、仕事はすべて上司の指示 によって進められます。上司は人事異動で数年ごとに交替し、まったく動物と関係のない部局の人間が 異動してくることが少なくありません。研究に理解を示さない上司が異動してきた時点で、あらゆる研究活動は ストップされます。 質問2への回答:個人への給付は望ましいことです。しかし、行政は予算で事業を執行しています。その中で個人が 独自の資金を得て仕事を行うことは、行政の原則に反しているため困難です。卑近な例として、科学技術庁から得た 研究助成金が市の一般歳入に組み込まれ、研究代表者名を所属長に変更させられたという経験を持っています。 質問3への回答:自らが所属する組織にメリットがない限り、外部機関との共同研究は認められません。とくに 内部の秘密が持ち出されるような共同研究は、「行政法」を盾にして禁じられます。 |
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県立H館から 質問1への回答:地方では、博物館はどこか別のところで生産された知識をその地方の人に消費してもらう場と 一般に捉えられていることが一つあると思います。地方に住む人が自然史に対して抱く関心は決して低くはないと 思うのですが、自分たちが払っている税金で働いている人間でなく、どこか別のところに雇われている人間 (中央の国立大学、あるいは欧米の研究機関)が生産した知識を輸入して、地方の博物館で加工してもらえば 良いと思っている人が多いかもしれません。これは地方自治のあり方とも関連していると思います。 ドイツやアメリカには州立の博物館が多く、いずれも一流の研究者を雇いどんどん研究させていますが、 それは普通のことだと一般大衆も考えている、あるいはその地域の政策決定に関与する人間がそう思っているらしい。 つまりその地方に住んでいる人がどれだけ自分たちのすんでいる地域の自立性を意識し、自分たちで普遍性のある文化を 育てるつもりでいるのかということです。しかし、こうゆうことを世間に言ってもしょうがないので、専門の研究者が 身近にいることの利点をわれわれは示さなければならない。これは地方レベルだけでなく、国レベルの問題でもある と思います。ようするに自然史系の学問を日本国が自ら発展させる必要があるのか、それともそうゆうものは 全て輸入で済ますかです。輸入でなく、独自に発展させることの利点を説かなくてはならない。この議論をした後、 それを地方に分散させてやる場合、どこかに中央を設けてそこで集中的にやる場合それぞれの利点を考える必要がある と思います。 質問2への回答:地域博物館には少数しか研究者を擁していないため科研費申請資格を得られない場合が多いので、 たしかに個人単位に申請が出来れば活性化に資すると思います。 質問3への回答:館外の研究者との共同研究には現在の所目だった制約はありません。人と自然の博物館では、 一部研究者は県立姫路工業大学の教官を兼職していますので、そのような研究者は大学教官に与えられた研究上の 自由を行使できます。一方、兼職していない研究者もいますが、兼職している研究者のほうが多いので、 それと同等の研究条件が与えられています。また、大学兼職はもちろん兼職していない人も博物館は科研費申請機関 として認定されているので科研費申請資格をもっています。ただし、このような恵まれた研究条件も悪化する可能性が あります。近年の地方自治体の財政状況の悪化に伴い、博物館運営の見なおしが迫られており、これは現在進行中です。 |
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県立I館から 今回のアンケートの内容は、多くのむずかしい問題をかかえているため、なかなか回答がむずかしく、ついつい 先延ばしになってしまいました。私自身の中で考えがまとまっているわけではありませんが、一応、 現時点での回答として送らせていただきます。 質問1への回答: ・いろいろな要因があり、何が主な原因と言えるかはよくわかりません。 ・地方の公立博物館であれば、「行政の研究活動に対する無理解」や「少ない旅費等 の研究予算」といったことを まず挙げるのは簡単ですが、それだけではないように思 われます。博物館という機関の性格を考慮し、 そこで何を調査研究すべきかという方向性が定まらない学芸員、あるいは現状に安住(埋没)してしまっている 学芸員側にも大きな要因があると思います。 質問2への回答: ・これは非常にむずかしい問題です。現状では、科研費の申請資格要件と地域博物館での研究活動の方向性が必ずしも 同じではないと思われるからです。 ・現行の科研費申請資格の機関指定に関する基準では、独創性・国際性といった側面が重視され、必ずしも 博物館活動(研究活動も含めて)を一生懸命やった延長線上で資格が得られるということにはなっていません。 こうした現状のままで申請資格を個人単位に付与することになれば、できるだけ他の博物館活動を敬遠して、 周りからひんしゅくをかってでも資格取得に直結する研究に精を出すというような傾向が、今以上に顕著になる 危険性があるように思えます。 ・申請資格を個人に与えることにするなら、地域博物館での地域的な地味な研究活動も評価されるようなシステムや、 地域博物館での学芸組織のある程度の分業化(学術系学芸員と教育系学芸員といったような)が前提になると思います。 ・「科研費補助金は、本来、優れた個人研究に対する補助であり、機関の研究費の不足に対する補助ではない」 とされていることからすれば、「申請資格を個人単位に」というのはまっとうな主張ではあると思います。しかし、 その場合は、大学であれ、試験研究機関であれ、博物館であれ、それらの機関に所属しない在野の1市民であれ、 申請資格が得られるような制度と連動するのもでなければおかしいのではないでしょうか。 質問3への回答: ・特に規定や制度はありません。当館では、学芸員本人の希望があり、過重な負担にならず、内容的に博物館にとって プラス(広い意味で)になるものであれば認めるというスタンスです。 ・当館は科研費申請ができる研究機関に指定されていないので、もっぱら館外からの依頼によって共同研究者あるいは 協力者の立場で共同研究に参加することになりますが、科研費による総合研究等のほか、自治体や財団等の補助金による 共同調査等などなど、様々なケースがあるので、あらゆるケースを想定して制度を作ろうとすると、どうしても手続きが めんどうで制限的なものになってしまう嫌いがあります。それよりは、個々に館長決裁の形で承諾する方がめんどうがない という考えです。 その他: ・以前は博物館であっても調査研究活動を活発に行っているところは「文部省科研費補助金申請を行うことができる 学術研究を行う機関の指定」を受けることができました。大阪、神奈川、横須賀の博物館が申請資格があるのは、 この時期に指定を受けたものです。しかし、臨教審答申以降は文部省の運用が厳しくなり、「博物館」は「教育機関であり、 研究を主たる業務とする機関ではない」という解釈で、原則的には博物館を科研費申請ができる機関として認定しない 方針とのことです。千葉県立中央博物館は例外で、兵庫県立人と自然の博物館では、県立大学附属研究所兼務の職員だけが 申請資格があります。 ・こうした文部省の方針のもとでは、「科研費申請資格を個人単位で」といっても、博物館勤務の職員が対象になるか どうかは疑問です。 ・私は、「科研費の申請資格を個人単位で」というよりは、以前のように、「博物館は調査研究も行うところであり、 活発な調査研究活動を行っているところは機関指定すべきである。」という世論を高め、機関指定をもう少し緩やかにする 運動をしていただく方が博物館界にとってプラスではないかと考える者です。機関指定は広くして、実際の採択は審査の 段階で行えばよいのではないかと思います。 ・また、以前は博物館学芸員が科研費の申請資格がなくても総合研究等の分担者になることができたのに、 最近は文部省の指導で、研究者番号をもたない者が分担者となることはむずかしく(不可能?)になっています。 この点が改善されれば、例え科研費申請資格が得られなくても、博物館学芸員・研究員が館外の研究者との共同研究を 行う道がかなり広がると思います。 |
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