哺乳類頭蓋画像データベース

茂原信生(京都大学霊長類研究所)・山田 格(国立科学博物館)


 哺乳類形態学の研究においては様々なアプローチが考えられるが、伝統的にタイプ標本など長期にわたる保管を 目的とする場合、骨格標本にして収蔵されることが多い。なかでも頭蓋は、それぞれの種の特徴を検討する際に もっとも重要な標本となる。本データベースでは、獨協大学医学部解剖学教室と国立科学博物館動物研究部動物 第一研究室に保管されている哺乳類頭蓋の画像を参照できるようにしたものである。哺乳類頭蓋画像データベースの メニューページ(http://svrsh1.kahaku.go.jp/souken/)から獨協医科大学と国立科学博物館のそれぞれの画像 データベースに、移動できる。


1.獨協医科大学解剖学教室哺乳類頭蓋骨画像データベース
 私たちの作成したデータベース(http://1kai.dokkyomed.ac.jp/mammal/)の素材は、獨協医科大学 解剖学教室所蔵の約3000個体の脊椎動物骨格標本のうち、哺乳類頭 蓋約1300の画像である。所蔵標本 に含まれる哺乳類の標本数は実は2000個体を優に超 えているが、今回撮影に用いた頭蓋(下顎骨と舌骨 を除く)はこのうちなるべく完全 な形をしているものを選んだ。撮影は、前後、左右、上下の6方向から 行った。前面・後面・左側面・右側面・上面の撮影は、原則として、耳眼平面 [眼窩の下縁と外耳孔の上縁 によって形成される平面] が水平になるように頭蓋を固定して行い、下面のみ上顎の歯列が形成する平面 [骨口蓋の部分] を水平になるようにした。実際の写真撮影にはディジタルカメラ(600万画素)を用い、 これに望遠レンズを装着して遠距離から撮影した。被写体の画角を小さく抑えて、パースペクティブ投影 に起因する歪みを出来るだけ小さくするためである。全ての写真にはスケールを一緒に写し込んだ。 上・下の方向の撮影には表面鏡と呼ばれる特殊な鏡を使用した。現時点での総撮影枚数は11198枚に達し 7752枚の圧縮した画像をホームページ上で閲覧できる。このほかにホームページ上で見やすいように 解像度を落として大きさを調整した画像が数種用意してある。目的の画像にアクセスする方法は、学名に よる分類一覧(目→科→属)から順に検索する方法と各種の索引(和名・学名・英名・標本番号)から直接 検索する方法の2通りを用意した。また、ホームページ上にある全ての標本画像はFTPによりまとめて ダウンロードすることも可能にしてある。これらの画像に加えて、撮影を行った全ての標本は、最大長や 最大幅などの4項目について、ノギスによる実測値を公開している。このほかに、標本の年齢や性別に 関する情報も確実なものについては、載せてある。


2.国立科学博物館動物研究部海棲哺乳類頭蓋骨画像データベース
 海棲哺乳類は海の生活に再適応した哺乳類で、クジラ・イルカの仲間(鯨目)、アザラシ・アシカの 仲間(食肉目・・・鰭脚類)、ラッコ(食肉目)、ジュゴン・マナティの仲間(海牛目)等からなるが、 場合によってはホッキョクグマやウミカワウソなども含む場合がある。海中生活への適応(呼吸・エコ ロケーションなど)の結果、頭骨の形状は陸棲哺乳類と大きく異なるように見えるが、頭骨を構成する 個々の骨はきちんと対応しており、異なっているのは個々の骨の大きさの比率である。

 国立科学博物館では海棲哺乳類の総標本点数は約4000にのぼる。地球上に棲息する海棲哺乳類、約 120種のうち78種の標本が何らかのかたちで収集保存されており。そのうち頭骨がほゞ完形なもの、 および頭骨の撮影が可能な大きさであるもの51種について画像データベースを作成した (http://svrsh1.kahaku.go.jp/souken/)。残念ながら日進月歩のデジタル技術のゆえに撮影年度に よって画像の質は大きく異なる。

 分類表(Rice,1998)の文字がリンク色の部分をクリックするとその種の頭骨画像が見え、その個体 の収集データの要約が表示される。

 なお本データベースに使用したデジタル画像の撮影なら びにwebページ化に要した費用は、国立科学博物館自然史資料情報化予算および文部省科学研究費補助 金研究成果公開促進費、総合研究大学院大学(1997-2000)費による。